バルカン半島の旅 その2

12時ちょうどにバスはザグレブを出発した。定刻に出発したのは今回の旅では殆どないことである。そこからボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボに向かう。街から離れていき、どんどん山奥に入っていく。アップダウンが激しい道を進み、14時半頃に国境に到着した。ボスニアはEUに加盟していないため、ここではパスポートチェックがある。このパスポートチェックのために、付近はひどい渋滞になっており、さらに出国と入国それぞれ独立してパスポートをチェックするために、相当な時間がかかる。今回の国境も、抜けるまでに一時間ほどかかった。

国境を抜け、バスは再び山道を走る。夏とは言え、徐々に暗くなっていきヘッドライトに群がる虫の量が増える。走行中に虫が潰され、フロントガラスはどんどん曇ってくる。

22時、30分遅れでサラエボに到着した。バス停から宿までは2kmほどあるので、町中を歩いて行く。あまりにも腹が減っていたので、売店で何かを買おうとするが、現地のお金を持っていないので、買えない。ATMをさがし、少量のお金を引き出した。売店でピーナッツと水を買い、また歩く。金曜日だからだろうか、夜中なのにバーには人で溢れ、大音量が流れている。途中小さな祭りのようなものをやっていたので、そこの屋台で飯を買って食べた。このエリアは現金は使えないらしく、カードで支払うことができた。さきほどせっかく現地のお金をおろしたのに使えないとは。

途中寄り道をしながら、宿に到着した。宿は街のほぼ中心部にある。この宿は、カードが使えないらしく、現金のみの支払いであった。先程現金を引き出しといてよかった。安宿ではあるが、部屋は十分広く快適である。サラエボは明日の朝十時には出発してしまうため、今日はすぐに寝て早朝から動くことにする。

サラエボ旧市街


明るくなり、サラエボの旧市街を歩く。ここは、主にイスラム教の街であるらしく他のヨーロッパの町並みとはかなり違う。建物もかなり低く、アジアの旧市街のような雰囲気すらある。一通り観光地を周る。と言ってもほとんど見どころはない。朝早くから開いているカフェでコーヒーを飲み、人気そうなパン屋でパンを買ってまたもやバス停に戻る。途中にサラエボの炎という場所があったが、ここは特にサラエボ事件とはあまり関係のないところであるらしい。

次の目的地は、観光地としてヨーロッパ人に有名なクロアチアのドゥブロヴニク。またクロアチアに入国することになる。

サラエボに来たときと同じく、バスはひたすら山道を進む。西の方角、つまりアドリア海側に進んでいるようで、途中にクロアチアに入国した。当然のことながら、ここでもパスポートチェックに一時間ほど取られる。

クロアチアの地図をよく見ると、ドゥブロヴニクはクロアチア本土と陸続きではなく、飛び地になっている。間にはボスニアのネウムという街がある。これは、ボスニアで唯一海と面した街となり、このような地帯を「回廊地帯」と呼ぶらしい。このまま通れば、また再びボスニアに入国し、少ししてクロアチアに入国する。恐ろしく時間がかかると思ったが、これらの国境は、警察がバスの中に入ってパスポートをチェックするだけという簡易的なものだった。

ほどなくして、ドゥブロブニクに到着した。今まで人気がほとんどない場所を通ってきたが、この一体だけではヨーロッパ人で溢れている。海も透き通り、わかりやすいリゾート地だ。このドゥブロヴニクの旧市街は、「アドリア海の真珠」とも言われるほど美しい街並みで、1979年に世界遺産に登録されている。海洋貿易によって栄えた都市で、15世紀には、この地域の中でも突出して発展していた。日本人にはまだあまり馴染みはないが、ヨーロッパ人の間では有名なリゾート地として名を馳せている。

ドゥブロブニクの旧市街


本当は海に入ろうと思い、今回の旅では海水パンツも持ってきたのだが、旧市街周辺には泳ぐところはなく、諦めた。レストランでイカ墨のリゾットを食べ、またバス停に戻る。移動はまだまだ続く。


この日、最後の目的地はモンテネグロの首都ポドゴリツァである。本当はドブロブニクのすぐ南にあるコトーというところで、一泊しようと思ったのだが次の移動の利便性を考えて、ポドゴリツァにした。相変わらず時間のかかる国境越えを経て、深夜一時半にポドゴリツァに到着した。

予約したバスターミナルからホステルまでは歩いて5分程度。車に乗った男が、「あのホステルに泊まるんだろう」と話しかけてきた。はじめは怖くて無視していたが、恐る恐る返事をし、車に乗る。この男性は本当にそのホステルの管理人だったらしく、ホステルまで乗せてくれ、鍵を開けてくれた。深夜に僕が到着するまで待っていてくれた良い人であった。旅先で話しかけてくる人を信じるか信じないかは難しい問題である。

部屋はドミトリーではなく一人部屋。大きな部屋であった。素早くシャワーを浴び素早く眠った。次の日の朝7時におき、チェックアウトをする。慌ただしい旅である。

ポドゴリツァ


ポドゴリツァの見どころは、はっきり言ってなにもないと言っていい。強いて言えば小さな時計台ぐらいである。次のバスまでの間、人気の少ない街を歩いてた。オープンスペースのあるレストランの横通ると、数人で食事をしていたおじさんらに話しかけられ、日本の物価などを聞かれた。先進国にはあまりないことである。結局僕はそこで朝食を食べることにした。食べたものはスープとケバブ。一人分の量ではなかったが全て食べた。

次の行き先は、アルバニアの首都ティラーナである。ここでも案の定パスポートチェックがあり、バスの到着は遅れた。

ティラーナ

ティラーナにつき、まずやるべきことはマケドニアのスコピエ行きのバスを予約することである。今回の旅で唯一ネット予約ができなかったのがティラーナとスコピエの間のバスである。次の日の朝に飛行機を予約しているのだが、それに間に合うバスはあと一時間後に出発するものしかない。仕方なくそれを予約した。ティラーナの滞在はわずか一時間になった。それまでに街の中心まで歩き、少し滞在してまたバス停に戻った。バスが出発し、深夜一時にスコピエに到着した。朝五時になるまで待ち、空港行きのバスで空港に行く。今回の慌ただしい旅もなんとか目的地に着くことができた。

スコピエのバスターミナル