抗原・抗体特異性の網羅的解析とは、特定の抗体がどの抗原(の一部)に結合するか、または特定の抗原がどの抗体に結合するかを、大規模かつ網羅的に調べる解析のことです。
網羅的解析が必要な理由は、以下の点が挙げられます。
- 詳細なエピトープマッピング:
- 抗体が抗原のどの部分(エピトープ)に結合するかを詳細に特定できます。これは、ワクチン開発や抗体医薬品の開発において、最も効果的な抗原部位を特定するために不可欠です。
- 交差反応性の理解:
- ある抗体が、本来の標的抗原以外の抗原にも結合してしまう現象(交差反応)を理解するのに役立ちます。これは、自己免疫疾患の発症メカニズムの解明や、抗体医薬品の副作用予測に重要です。
- 新規抗体の発見と最適化:
- 疾患に関連する抗原に対する抗体を網羅的に探索し、新たな治療薬や診断薬の候補となる抗体を発見できます。また、既存の抗体の結合特異性を改善するための情報も得られます。
- 免疫応答の理解:
- 感染症やワクチン接種後の免疫応答を詳細に解析することで、どのような抗体が産生され、どの抗原を認識しているのかを理解できます。これは、感染症の予防や治療戦略の開発に貢献します。
- バイオマーカーの探索:
- 疾患に特異的な抗体や抗原を同定することで、診断や予後予測に役立つバイオマーカーの探索につながります。
これらの理由から、抗原・抗体特異性の網羅的解析は、基礎免疫学研究だけでなく、医学、薬学、診断薬開発など、幅広い分野で重要な役割を果たしています。