順列と組み合わせの関係 #学ぶ
問題
カードを2回引いて、その足し算が奇数である確率を求めなさい。なお、カードを1回引いて、それを戻す場合と戻さない場合両方考えなさい。
答え
承知いたしました。ジョーカーを除いた52枚のトランプカードから2枚引く場合について、カードの数字の合計が奇数になる確率を、カードを戻す場合と戻さない場合の両方で計算します。
トランプのカードの数字について整理します。
- 合計枚数: 52枚
- 各スート(スペード、ハート、ダイヤ、クラブ)には、A(1), 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, J(11), Q(12), K(13) の13枚があります。
- 奇数のカード: 1, 3, 5, 7, 9, 11(J), 13(K) の7種類。各スートに7枚あるので、合計 枚。
- 偶数のカード: 2, 4, 6, 8, 10, 12(Q) の6種類。各スートに6枚あるので、合計 枚。
2枚のカードの数字の和が奇数になるのは、次の2つのパターンのいずれかです。
- 1枚目が奇数で、2枚目が偶数
- 1枚目が偶数で、2枚目が奇数
1. カードを元に戻す場合(復元抽出)
引いたカードを毎回デッキに戻すため、1回目と2回目でカードを引く確率は変わりません。
- 1枚目に奇数を引く確率:
- 1枚目に偶数を引く確率:
- 2枚目に奇数を引く確率:
- 2枚目に偶数を引く確率:
求める確率は、「1枚目が奇数かつ2枚目が偶数」の確率と「1枚目が偶数かつ2枚目が奇数」の確率の合計です。
P(和が奇数)=P(奇数1∩偶数2)+P(偶数1∩奇数2)
P(和が奇数)=(P(奇数1)×P(偶数2))+(P(偶数1)×P(奇数2))
P(和が奇数)=(137×136)+(136×137)
P(和が奇数)=16942+16942=16984
したがって、カードを元に戻す場合、和が奇数になる確率は 16984 です。
2. カードを元に戻さない場合(非復元抽出)
引いたカードはデッキに戻さないため、1回目の結果が2回目の確率に影響します。
パターンA: 1枚目が奇数、2枚目が偶数の場合
- 1枚目に奇数を引く確率:
- 1枚目に奇数を引いた後、残りのカードは51枚。偶数は24枚残っています。
- 2枚目に偶数を引く確率(1枚目が奇数だった条件の下で):
- このパターンの確率:
パターンB: 1枚目が偶数、2枚目が奇数の場合
- 1枚目に偶数を引く確率:
- 1枚目に偶数を引いた後、残りのカードは51枚。奇数は28枚残っています。
- 2枚目に奇数を引く確率(1枚目が偶数だった条件の下で):
- このパターンの確率:
求める確率は、パターンAとパターンBの確率の合計です。
P(和が奇数)=P(奇数1∩偶数2)+P(偶数1∩奇数2)
P(和が奇数)=22156+22156=221112
したがって、カードを元に戻さない場合、和が奇数になる確率は 221112 です。
まとめ
- カードを1回引いて元に戻す場合、2枚のカードの数字の和が奇数になる確率は 16984 です。
- カードを1回引いて元に戻さない場合、2枚のカードの数字の和が奇数になる確率は 221112 です。
質問
なぜ、戻さない場合に限り、組み合わせ的なアプローチでも計算可能になるのですか
答え
それは良い質問ですね。なぜカードを戻さない場合(非復元抽出)に限って、組み合わせ的なアプローチ(つまり、選ぶ順番を考慮しない場合の数を使って確率を計算する方法)でもうまくいくのか、その理由を掘り下げてみましょう。
鍵となるのは、確率を計算する際の基本原則である「同様に確からしい (equally likely)」という考え方です。確率は基本的に、
で計算されますが、この計算が正しく成り立つためには、分母の「起こりうる全ての事象」を構成する根元事象(それ以上分解できない個々の結果)の一つ一つが、同じ確率で起こる必要があります。
カードを戻さない場合(非復元抽出)
この場合、根元事象を「どのカードが何番目に引かれるか」という順番を考慮した事象(順列)として考えることも、「どのカードの組み合わせが最終的に選ばれるか」という順番を考慮しない事象(組み合わせ)として考えることもできます。そして、どちらの考え方でも根元事象が「同様に確からしい」という条件を満たすのです。
順列で考える場合(順番を考慮)
- 根元事象: 「1枚目にカードX、2枚目にカードY」 (X≠Y)
- 起こりうる全ての事象の数: 通り
- 例えば、「ハートのA → スペードの2」という特定の順番で引かれる確率は です。これは、他のどんな特定の順番(例:「クラブの3 → ダイヤのK」)で引かれる確率とも同じです。
- つまり、 通りの根元事象はすべて同様に確からしいので、順列の場合の数を使って確率計算ができます。
- 確率 = 52×51(28×24)+(24×28)
組み合わせで考える場合(順番を考慮しない)
- 根元事象: 「カードXとカードYの組み合わせ {X, Y}」 (X≠Y)
- 起こりうる全ての事象の数: 通り
- 特定の組み合わせ(例:「{ハートのA, スペードの2}」)が選ばれるのは、「ハートA → スペード2」または「スペード2 → ハートA」のいずれかです。その確率は です。
- これは、他のどんな特定の組み合わせ(例:「{クラブの3, ダイヤのK}」)が選ばれる確率とも同じになります。
- つまり、C(52,2) 通りの根元事象(組み合わせ)もすべて同様に確からしいのです。
- したがって、組み合わせの場合の数を使っても確率計算ができます。
- 確率 =
このように、非復元抽出では、最終的に手元に残るカードの「組み合わせ」自体が、どれも同じ確率で選ばれるため、組み合わせの場合の数を使って確率を計算しても問題ないのです。
カードを戻す場合(復元抽出)ではなぜダメなのか?
復元抽出の場合、「組み合わせ」を根元事象として考えると、「同様に確からしい」という条件が満たされません。
- 考えられる組み合わせには、「異なる2枚の組み合わせ {X, Y} (X≠Y)」と「同じカード2枚の組み合わせ {X, X}」の2種類があります。
- 特定の「異なる2枚の組み合わせ {X, Y}」が選ばれる確率: (X→Y の確率) + (Y→X の確率) =
- 特定の「同じカード2枚の組み合わせ {X, X}」が選ばれる確率: (X→X の確率) =
- このように、選ばれる組み合わせの種類によって確率が異なります(異なる2枚の組が選ばれる確率は、同じカード2枚の組が選ばれる確率の2倍)。
- 根元事象(組み合わせ)が「同様に確からしくない」ため、単純に組み合わせの数だけで確率を計算することはできません。この場合は、順番を考慮した事象(例:「ハートA→スペード2」)を根元事象として考える必要があり、それらは 通りあり、すべて同様に確からしい(確率 1/522)です。
結論
カードを戻さない場合(非復元抽出)に組み合わせ的なアプローチが使えるのは、どのカードの「組み合わせ」が最終的に選ばれるかという観点で見ても、それぞれの組み合わせが選ばれる確率が等しくなる(同様に確からしい)からです。一方、カードを戻す場合は、同じカードを選ぶ可能性があるため、組み合わせによって選ばれる確率が異なってしまい、組み合わせの数だけでは単純に確率計算ができないのです。