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村上春樹 『雨天炎天』

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ストックホルム市立図書館で日本語の本があると知ってから、よく本を借りている。今回借りたのは、村上春樹の『雨天炎天』。 以前読んだ『辺境・近境』に似た本で、村上春樹が旅をした記録。小説ではなくノンフィクション。今回は短い旅ではなく、ギリシャとトルコを数週間旅をした内容が書いてある。 村上春樹が好きな人って、村上春樹のライフスタイルがすきなんだと思う。常に淡々としていて、喜怒哀楽も激しくない。海外で優雅に暮らし、早朝に小説を書き、午後にランニングをする。小説に出てくるキャラクターのような生活。そもそも両方同じ人が書いた文章だから似てくるのは当たり前かもしれないけど。 この本で記憶に残ったのは二点。 1つは村上春樹の写真。元々ほとんど人前にでないけど、それは別にわざとでないわけではなく、出る必要がないからでないだけだということ。その証拠にこの本に沢山の本人の写真がある。 ヴァンネコと写真を撮る村上春樹。ちょっと若い。 もう1つはトルコのカフェで質問攻めにあっていたとき。どこに行っても現地のトルコ人たちに興味を持たれて辟易しているみたいだが、職業を聞かれた時に「ジャーナリスト」と答えていること。嘘をつくときはちゃんと嘘をついたと書いてあるので、おそらくジャーナリストというのは嘘ではないんだと思う。実際にこの本はノンフィクションなんだけど、村上春樹の代表は小説なので小説家と答えるものだと思っていた。 僕もこうやって旅をして本を書く人生にしたいなー。

100分で名著 『パスカル パンセ』

最近この番組にはまってる。今回はパスカルのパンセ。 ”人間は考える葦である”でおなじみのパンセ。パンセは、一つの話ではなく、メモ集みたいなものらしい。その中から抜粋して紹介。なお、僕の主観も入ってるかもしれないです。 ・人間は生まれつき、あらゆる職業に向いている。忙しくしていれば、いつかはその仕事がなじんでくる。 ・幸福を求めて動いたところで、その目標を達成するころには幸福は別のところに逃げている。アキレスと亀のようなもの。 →上と含めて。ラッセル幸福論では、自分が心からやりたいことをやれと言っていたのに対し、パスカルは結局どれも一緒だよと言っているように聞こえる。 ・自己愛(もしくは自己嫌悪)が諸悪の根源。自己愛が生まれるのは他者がいるからである。他者がいることが行動のすべての原理 →ラッセル幸福論、三木清の人生論ノートも同じことを言っていたのだが、この二つは「だから他者を除いて自分がやりたいことをやれ」っていう論調だったような気がする。でも、パンセは行動がすべての原理と言っていて、諸悪でありながら肯定感がある。 ・人間は死に向かっているが、死を直視しないよう、仕事や趣味という壁を作って生活している。 ・デカルトとパスカルの違い。デカルトは世界には必ず因果関係があり、明確なゴールもある。パスカルは一貫性などなく、ゴールもない。

100分de名著 『三木清 人生論ノート』

『ラッセル 幸福論』に続き、100分de名著シリーズ。今回は日本人の著者。幸福論にかなり似ているところがある。 以下自分なりにこの本をまとめてみた。ただし、自分なりの解釈も入っている可能性もある。 自分が幸福であることは重要である。なぜなら、自分が幸福でなければ他人に優しくすることができないから。 幸福=成功ではない。何かを成し遂げると幸福になるのではなく、自分の力で今すぐにでも幸福になることはできる。 自分を苦しめるもの(不幸の原因)は他人の目を気にして、自分を大きく見せること(虚栄)である。その点で、偽善者は不幸である。なぜなら偽善者は他人を常に意識し、他人の求めている役割だけを演じているからである。他人の評価ではなく、自分の評価で自分を作り上げるべきである。それは虚栄ではなく向上心と言える。向上心から、現実を変えることができる。 世界が広大すぎて、生きていくことに絶望するような徒労感がある。例えば、自分が何をしても世間には何の影響も与えるから意味がない、どうせ死ぬのだから生きて何をしても無駄だ、など。しかし、自分は存在しているという事実からは逃れられない。だからその虚無から、自分自身で生きていく意味を作っていかないといけない。 孤独であることを恐れてはいけない。例えば、世間とは異なる意見を持っていて、それを発表すると非難されると思っても、発表する勇気を持たなければならない。何も発せずに黙っていることも自分自身に責任とて跳ね返ってくる。 生きていることは不安定なことである。不安定だからこそ、希望が生まれる。なぜならもし一切が保証されていたら希望すらなくなる。

100分DE名著 『ラッセル 幸福論』1:幸福は獲得するものである。

Kindle unlimitedをやめて買った2冊めの本。『ラッセル幸福論』は僕の中のベスト10冊に入っているのだけど、その本を紹介したNHKの番組本。どういう紹介をされているのか興味があって読んでみた。 正直言うと、本家の『ラッセル 幸福論』を買ったほうが100倍いいと思う。だけどせっかく買ったので読んだ分だけ大切なところをまとめておこうと思う。 まずこの本の原著のタイトルは ”Conquest of Happiness”。直訳すると「幸福の獲得」。このことからも分かるように、幸せというのは、待っていても勝手に来るものではなく、自分で積極的に獲得していかなければならない。能動的に行動することによって幸福は得られるものであるらしい。 たしかに、僕は今幸福ではないけれど、そのことに嘆いていただけでは全く幸せにはならない。だから、これからは能動的に幸福になるように行動していこうと思う。

椎名誠 『メコン・黄金水道をゆく』

Kindle unlimitedをやめた。 Kindle unlimitedとは、月額980円で本が読み放題になるサービス。ただし、特定の本だけ。僕が解約したのは単純に読みたい本がなかったから。月額でお金を払うぐらいなら読みたい本を一個ずつ買ったほうがいいと思ったからである。 Kindle unlimitedをやめ、早速本を買うことにした。最初の本の著者は椎名誠と決めていた。 僕が一番好きな作家は何人かいるけど、圧倒的に一位は椎名誠である。日本にいたときは、必ず図書館で一冊は椎名誠の本を借りていた。本は僕にとって癒やしなのだが、椎名誠の本は癒やしを通り越して精神安定剤のような存在になっていた。冬の北欧でビタミンD不足になるように、僕は椎名誠不足になっていたのである。 数百冊ある椎名誠の本の中で、僕が選んだのは『メコン・黄金水道をゆく』である。 45日かけ、メコンを下りながら現地の人の生活を書いた紀行文。椎名誠はコラム、小説も書いているが僕は圧倒的に彼の紀行文が好きなのである。 もちろんこの本は読んだことがあるのだが、改めて読むとほとんど内容を忘れており、新鮮に読むことが出来た。しかし、ところどころ覚えているところもあった。 その1つは、カエルの件である。ベトナムのメコンデルタでは、様々なものが売られている。そこでカエルを売っている女性がおり、その女性が往きたカエルの背中を5cmほどナイフで切り、指を入れてきれいに皮を剥がす。皮を剥がされたカエルはまだ生きており、「あれま!!」という顔をしながらぴょんぴょん跳ねるのである。そのカエルはかごに入れられ、そのかごには皮を剥がされたカエルが、みんな「あれま!!」という顔をしてぴょんぴょんはねているそうだ。 椎名誠の紀行文は、「怪しい探検隊」もしくは「東日本何でもケトばす会」と呼ばれる旅仲間と一緒のことも多く、なかなか面白おかしく書かれてある事が多いのだけど、この『メコン・黄金水道をゆく』は、おそらく同行しているのは通訳の人だけで、文章も比較的淡々と書かれている。 この本を読んだ時、僕は彼に憧れていることを改めて思い出した。旅をし、その出来事を本に書いて収入を得る。僕もそういう生活がしたいと思っていた。僕が旅好きで、今も頻繁に旅に出ているのも椎名誠の影響であり、今でも椎名誠のような生活をしたい