年齢による免疫細胞の変化 #学ぶ
すごすぎる研究
https://www.nature.com/articles/s41590-024-02059-6
研究の目的:
人間の免疫システムが、生涯を通じてどのように進化するのかを、単一細胞レベルで詳細に理解することを目指しました。
研究方法:
上海浦東コホート(NCT05206643)に参加した、新生児から90歳以上までの幅広い年齢層の健康なボランティア220人から血液サンプルを採取しました。
次の高度な技術を組み合わせて、免疫細胞を分析しました。
単一細胞RNAシーケンス: 個々の免疫細胞内でどの遺伝子が活性化しているかを明らかにし、細胞の特性や機能を詳細に調べます。
単一T細胞およびB細胞受容体シーケンス: 抗原を認識して攻撃するT細胞とB細胞の受容体の多様性を分析します。これにより、適応免疫応答について知ることができます。
ハイスループット質量細胞 cytometry: 免疫細胞の表面にある様々なタンパク質の量を測定し、細胞の特性や機能を調べます。
バルクRNAシーケンス: サンプル中の全ての細胞の遺伝子発現プロファイルを平均的に調べます。
フローサイトメトリー: 異なる種類の免疫細胞を特定し、数を数えるための標準的な技術です。
主要な発見:
T細胞は加齢の影響を最も受ける: T細胞は、加齢とともに最も顕著な変化を遂げ、特に他の細胞との相互作用において大きな変化が見られました。
T細胞サブセットによって加齢パターンが異なる: 特定の種類のT細胞は、それぞれ異なる加齢パターンを示しました。
GNLY+CD8+エフェクターメモリーT細胞: これらの細胞は、全てのT細胞サブセットの中で最もクローン拡張(増殖)を示し、子供と高齢者では異なる機能的特徴を示しました。
CD8+ MAIT細胞: 細菌と戦うために重要なこれらの細胞は、青年期に相対的な存在量、クローン多様性、抗菌能力のピークに達し、その後徐々に減少しました。
子供に豊富な新しいB細胞サブセット: 研究者たちは、以前には認識されていなかった「細胞傷害性」B細胞サブセットを特定し、子供に多いことを発見しました。
免疫年齢予測モデル: 収集されたデータに基づいて、個人の「免疫年齢」を推定し、免疫機能が異常な人を特定できるモデルを開発しました。
研究の意義:
この研究は、人間の免疫システムが一生を通じてどのように変化するかについての貴重な情報とリソースを提供します。
正常な免疫加齢を理解するのに役立ち、加齢に関連する免疫疾患の研究や新しい治療法の開発に繋がる可能性があります。
重要なポイント:
単一細胞レベルでの解析: この研究の最大の強みは、単一細胞レベルで免疫システムを詳細に解析したことです。これにより、これまで分からなかった様々な免疫細胞の特性や機能の変化を明らかにすることができました。
幅広い年齢層: 新生児から高齢者まで、幅広い年齢層を対象としたことで、免疫システムの加齢に伴う変化を包括的に捉えることができました。
新しい免疫細胞サブセットの発見: 子供に多い新しいB細胞サブセットを発見したことは、免疫システムの理解を深める上で重要な発見です。
免疫年齢予測モデルの開発: 免疫年齢を予測できるモデルを開発したことは、個人の免疫状態を評価し、健康状態を把握する上で役立つ可能性があります。
この研究は、今後の免疫研究の進展に大きく貢献することが期待されます。