「仕事中毒」の罠:新自由主義が生み出す過労と精神的崩壊
現代社会において、精神的に追い詰められる人が増えている。その原因について、書籍『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』では、新自由主義という思想の影響が指摘されている。
戦後の復興期、人々は国家のために働き、それが国の成長を実感できる時代であった。しかし、国家が成熟し、成長が鈍化すると、仕事と国家の成長が直結しなくなる。そこで台頭したのが、新自由主義という考え方である。
新自由主義は、政府の役割を最小限に抑え、市場原理を最大限に活かすことを主張する。この思想の下では、労働も自己責任として捉えられ、個人の努力によって成果を得ることが求められる。
実際、1990年代以降、日本政府は「夢を追いかけるために働こう」というメッセージを発信し、仕事は自己実現の場であると宣伝してきた。2000年代に入ってもその傾向は強まり、作家村上龍による『13歳からのハローワーク』のようなベストセラーも現れた。
このような社会風潮の中で、仕事は自己表現の場となり、自分自身と切り離せない存在と捉えられるようになった。そのため、仕事がうまくいかないことは、自分自身を否定されているような感覚に陥り、逃げ道を見失ってしまうのである。