西東京市 くすの樹
洋館のような立派な喫茶店。この喫茶店は僕が少しの間バイトをしていたところである。コーヒーが好きでカフェでバイトしたいと思いここでバイトをした。この喫茶店はもう閉店し、今はスターバックスになっているらしい。立派な洋館も建て替えられている。 僕がバイトしていたときの人たちも、顔は覚えているのだけど、名前を覚えていない。バイトの人たちだから下の名前を覚えていないのは当たり前かもしれない。多分僕の名前も誰も覚えていないだろうな。大学の知り合いなら、友人経由でつながることは可能だけど、バイトの人達だとどうやっても会えないだろうな。僕の人生にはもう彼らは存在しないし、彼らの人生にも僕は存在していない。 三島市に住んでいたとき、よく夜に散歩をしていた。家から駅まで歩いてまた家に帰るというまったくつまらない散歩。ある時、途中に通るスナックが盛況だった。いつも静かでやっているのかわからないぐらいだったのに。その次、閉店の張り紙が貼ってあり、一ヶ月後には縦壊され更地になっていた。更に一ヶ月ごたつと、もはやそこに何があったのか思い出せなくなる。 でもそれでいいのかもしれない。生命は絶えるがそこからまた新しい生命が生まれる。要はただの物質循環なのである。