2020お遍路


 

今年も徳島にやってきた。徳島に来たのは2018年、2019年に続いて3回目。このなにもない街がだんだんとすきになってきた。

バスで大阪から淡路島を経由し徳島駅へ。そこから駅近くのビジネスホテルへ泊まる。この旅3回だけ見ても自分の中で旅というものの定義が変わっているのがわかる。2018年は徳島駅周辺で最も安いホテルに泊まった。2019年は高いホテルに泊まり、2020年はその中間のホテルに泊まった。僕の中で、旅というのは移動であり、レジャーではないという気持ちがあった。だから一回目は最も安いホテル。その分設備は良くなく、駅からも少し歩く。そこから一年経ち、金銭的に余裕が出てくるようになり肉体的にも楽にしたいと思うようになり、2回目は高いホテルに泊まった。3回目はその中間の意識になり、高くも安くもないホテルに泊まった。

年末のビジネスホテルというのはなんとなく寂しい雰囲気が漂っている。特に今年は自粛が呼びかけられており、宿泊している客も一層少ないだろう。

夜に徳島駅に着き、ホテルにチェックインをすませ、徳島ラーメンを食べに行った。僕はラーメンをそこまで愛してはないが、せっかく徳島にきたのだから一回ぐらいはラーメンを食べた方がいいだろうと思った。いつもは行列ができる店らしいが、少なくとも今年の年末は全く行列はできてないかった。

次の日、ホテルで朝食を済ませ、バスで18番札所である恩山寺前まで行く。恩山寺から次の立江寺までは歩く。誰もいない晴れた冬をひたすら歩くことで、今年もお遍路に来たのだということを体が思い出していく。立江寺に到着したのは11時過ぎ。そこから20番札所の鶴林寺までは10 km以上も歩かなくてはならず、さらに次の太龍寺までも山道ということで、その二つは飛ばして平等寺に行くことにした。平等寺は新野という駅から徒歩30分程度である。立江寺から立江駅まではすぐなのだが、そこから1時間ほど列車を待ち、さらに阿南駅で南に行く電車を2時間ほど待った。新野駅に着いた頃には日が赤くなっていた。本当は次の薬王寺まで行こうと思ったがこの日は平等寺で終わることにした。徳島駅の電車まで結構時間があるから平等寺でしばらく休んだ。年越しの準備のためか、せわしなく掃除をしている人が数人いて、雑談をしている。お遍路の旅は周りに人がいない時間が圧倒的に多いから、こういう風に人の声が聞こえるというのは安心感がある。


やることもないので、外を見上げてみた。冬の四国は本当に気持ちがいいくらい晴天だ。薄い雲が出ていたがそれもなくなり、空高くにトンビが舞っていた。しばらく見ていたが、一回も羽ばたきもせず気持ちよさそうに旋回している。

僕はこの年末、仕事が忙しくてやり残したことがある。それがずっと気がかかりだったのだが、空を見ているうちにいつの間にかそんなことどうでもよくなった。何があっても死ぬことはない。いや、死ぬかもしれないけど最悪死ぬだけだ。そんなに大したことはないのだ。

電車で徳島駅に着き夕飯を食べる。駅近くの「安兵衛」という居酒屋に行った。僕は酒が飲めないが、居酒屋はいろんなメニューがあるのが良い。ジンジャエールを頼み、こまごまと料理を注文した。中でも豆腐ステーキは絶品で、ぜひまた来たときは頼みたいと思った。満足な一日であったが、なぜかホテルで全く眠れずずっとテレビをつけっぱなしにしていた。



次の日は7時半のバスに乗り、鶴林寺へ向かう。バス停を降り、山道を4kmほど進む。僕は歩くこと自体は全く区ではないのだが、このお遍路の旅はちょこちょこ山道、いわゆるお遍路転がしが含まれており、そこがかなりつらい。去年も藤井寺から焼山寺は常に山道で、着ていたダウンが汗でびしょびしょになっていた。今年も全く同じダウンを着ており、去年と同じく汗でびしょびしょになった。数人に抜かされ、ようやく鶴林寺に到着した。しかしこれでお遍路転がしは終わりではない。次の太龍寺までも山道なのである。僕は山道に完全に参ってしまい、途中から太龍寺に向かう山道ではなく太龍寺ロープウェイの入り口に向かう車道を歩くことにした。

太龍寺ロープウェイに到着したのは12時10分。ここは山の上にある寺までロープウェイで行けるのである。12時20分出発のロープウェイがあるが、結局僕はそれに乗らなかった。次の薬王寺に行くにはバスで駅まで行き、駅から列車で日和佐駅まで行く必要がある。そのバスが13時10分発でそのバス停までロープウェイ乗り場から歩いて20分かかる。寺まで行ってしまうとそのバスに間に合わないのだ。別に何を競っているわけでもないのだから、薬王寺は今回はあきらめロープウェイに乗ればよかったのだが、今年中に徳島を終わらせたいという気持ちが出てきてしまい、結局ロープウェイには乗らず、太龍寺にも行かなかった。

ロープウェイ乗り場まで行ったがそこからすぐ和食東というバス停まで歩いた。腹が減っていたのでバス停近くにあるカフェ風レストランでステーキカレーを食べた。



バスに乗り、駅から列車で日和佐駅まで向かう。途中寝てしまい危うく寝過ごすところであった。目を覚ますと日和佐の看板があり、慌てて降りた。そこから薬王寺まではすぐである。これで3年がかかりであったが徳島の23か所の寺はすべて回った(太龍寺を除く)。まだ帰りの列車まで一時間あるので、近くの銭湯に入り、そこから徳島駅に向かう。日和佐駅から徳島駅までは1時間半程度もかかってしまった。3年もかかったが、結構な距離を進んだのだと実感する。



徳島駅に戻り、一人打ち上げをしたいところだがこの日は僕は金欠であった。銀行口座に金はあるのだが、キャッシュカードの不具合で使えなくなってしまったのだ。数千円持っているが、帰りの電車代なども必要なのでそんなに使えない。結局徳島最後の夜は松屋のカルビ丼500円で絞めとなった。

アーカイブ

もっと見る