実家へ帰る その2:数年ぶりの墓参り

始発で広島駅を出発し、10時前に山口駅に到着した。山口駅周辺は変化がない。桜がちらちら咲いているがまだ満開ではないようだ。そこから歩いて親戚の家に行く。

私の故郷は山口だが、実家というものはもう存在しない。家族というものも存在しない。だから、故郷と行っても、帰る場所というところがないので気兼ねをしないといけない。そんなもの必要ないと思う人もいるだろうが、やはり僕の心の中には、自分の家のような気軽さはないのである。

親戚の家に着いた。その家には僕の母親の妹、つまり叔母とその夫が住んでいる。飲食店を経営しているので夫はもう家を出ているが、叔母は11時過ぎまで家にいる。家の中も匂いも全く変わっていない。しかし、よく見るとやはり徐々に劣化しているところはあるようだ。

まず、叔母のしゃべりかたがゆっくりになった。もうそのくらいの年齢なので当たり前であるが、母親よりもかなり元気な印象だったので、余計にゆっくりとした喋り方が気になった。シャワーを浴びて思ったが、風呂桶をしばらく使っていない印象でかなり黒ずんでいる。壁も猫のひっかき傷だらけで劣化が激しい。しかしこういうものなのかもしれない。

この家に来た目的の一つは、僕の荷物を大阪に送ることである。僕がスウェーデンに行ったとき、実家がないのでここに送ったのである。スーツケース2つぶんあり、一つはダイビング器材、もう一つはなんだかよくわからないガラクタばかりである。そのガラクタをすべて捨てようかと思ったが、捨てるのも迷惑をかけてしまうと思い、大阪に送ることにした。向こうで捨てることになるだろう。ダイビング器材も僕が送ってそのままにしてあるらしく、かなりホコリをかぶっていた。掃除好きの叔母にしては珍しい。家一軒あるといっても、本当に使うのはごく一部で、それ以外はほったらかしになってしまうのだろう。少し寂しい気持ちもあるが、それでいいのだとも思う。

昼に店に行く。今は近くにマンションが建つらしく、その工事関係者がたくさん来るので忙しいらしい。忙しいのはいいことだ。1時になり客も減ったので僕も食事をいただく。今まで散々無料で食べさせてもらっていたので、今日は1万円置くことにした。本当は照れくさくて渡そうかどうか迷ったが、渡してよかった。

店が終わり、三人で墓に行く。僕が山口にいたときは月に一度程度墓に行っていたが、もう誰も墓に行っていないのだと思う。僕自身、墓どころか山口に行かないので、人のことは全く言えない。しかし僕が山口に帰ることでこの夫婦も一緒に行くきっかけになる。せめて半年に一度は行かないといけない。

思ったとおり、墓は草で荒れている。申し訳ないという気持ちがいっぱいで、草をかるが持っている鎌では刈れないほど根が深い。また定期的に来ることにして、墓を去った。

帰り道、以前車で大事故を起こしたことを聞いた。一方通行の道を進み、前から来る車と正面衝突したらしい。生きていたのが不思議だと思うぐらいの事故だったらしい。人生生きていればなにかそういうこともあると言っていたがまさにそうだろう。生きていれば、たまにとんでもない困難に出会う。しかし、他人にはそれがわからない。それでいいのである。他人の困難を自分が背負えないように、自分の困難を他人に背負わせてはいけないのである。

墓から帰り、そこからしばらく昼寝をする。よる六時に広島駅に向かって電車に乗る。今日は広島の友人宅に泊まることにした。

つづく・・・