今の猿は人間にはならない

遠藤周作の『眠れぬ夜に読む本』に以下の文が書いてあった。

「例えば私にはあの進化論というやつがまだよくわからない。もし人間が猿の進化したものなら、織田信長の時代の猿の子孫は現在は幾分は人間らしい体つきや容貌に変わっているはずなのに」

これは、進化論を信じない人たちがよく使う常套句だ。この文章の間違った点は、前者の猿と後者の猿を同一とみなしていることにある。

「人間は猿から進化した」。これは科学的にも正しいと言っていい。しかし、ここでいう猿というのは現代に生きている猿とは違うものである。我々の先祖は、毛むくじゃらでもしかしたら今の猿と似ていると思うかもしれないが、現代の猿は、祖先の猿と同一ではなく人間と同じく祖先から進化を遂げた最新の生物なのである。人は自分から離れた存在は違いを区別できなくなってくる。アイドルはみんな同じ顔であると言っているおじさんは、若い人にはおじさんはみんな同じに見えると思われているのだ。だから、先祖は猿に似ていると人間は思っているかもしれないが、それは間違っている。もしかするとチンパンジーからすると、先祖は人間に似ていると思っているかもしれない。もしそうならば、「どのくらい経ったら人間はチンパンジーになるのか」と疑問を持つチンパンジーがいるかもしれない。ただ、その前にチンパンジー自信が進化論を学ぶ必要があるのだけれど。

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